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麻薬戦争: いまだに多くの問題に直面するフィリピン

 

201710月、マニラ市街で横たわるAldrin Castilloと、そのそばで悲しむ母親。政府の麻薬戦争に伴って発生する、このような容疑者の路上射殺に対して激しい非難が起こっている

 

フィリピン人権委員会(CHR)は、ドゥテルテ政権は、残忍なまでの違法麻薬に対する麻薬戦争おいて当初の目標を達成していないを考えています。

 

CHRの報道官、Jacqueline de Guia弁護士は「フィリピンにおいて麻薬が拡散し続けている兆しがあるという報道が多く流されています。それにより、本来は半年で終わるはずだった同時に麻薬戦争の効果にも疑問がでています」と語ります。

 

この半年という期限は、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領が政権発足時、政権が違法麻薬問題の解決を図るために設けたものです。その後、大統領はその期限を大統領任期と同じ2022年まで延長しました。

 

2年目の施政方針演説で、大統領が麻薬に対して容赦ない戦闘を行うと公約してから1年。それでもなお、政府は麻薬戦争をさらに前進させようとしています。

 

多数の死者

フィリピン麻薬取締庁(PEDA)が3月に発表したデータによると、2016年6月末のドゥテルテ政権の発足後、91,704回もの違法麻薬対策の作戦が実行され、「麻薬犯罪に関わった」4,075名が殺害されました。

 

フィリピン国家警察と大統領府は、2016年7月1日から2018年6月30日までで4,354名の殺害を確認していますが、これはニューヨークのヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)による推計死者数12,000名と大きくかけ離れています。

 

一方、アネテオ・デ・マニラ大学とデ・ラ・サール大学の研究者が6月25日に発表した報告では、2016年5月から2017年9月までの間の死者数は5.021名にのぼります。

 

しかし、CHRは、麻薬撲滅作戦の勢いが止まるところを知らない一方、政府がその問題の根幹にある貧困に対処しない限り、解決策を見出すことはできないと見ています。同時に、フィリピン軍により何千人もの殺害に関わっているという告発があったことで、この作戦において政府に対する支持が弱まっているとの見方を示しています。

 

De Guia氏は「超法規的処刑が行われたという告発により、警察の作戦に対する信頼性に疑問が起こっています。さらに、極端すぎる案が出されていることで、政府への不信感が増幅しています。例えば、麻薬取締庁は子供に対して強制的な麻薬反応試験を行うというのです。子供の利益最優先の原則を台無しにするものです」と怒りを隠せません。

 

政府は麻薬戦争において超法規的処刑の事実を繰り返し否定しています。2018年5月、ケソンのフィリピン国家警察本部で行われた記者会見で、Oscar Albayalde長官は「重要な前進があったにも関わらず、多くの枝葉の話題と、ある種の意図的に歪められた情報によって、反麻薬作戦の本来の形があいまいになっている。時には、人権問題や政治的意図により、本作戦の本来の意図が誤った形で広められている」と反対派を非難しました。

 

警察官に対する刑事告発

2018年4月、欧州議会が政府に寄る残忍な麻薬撲滅対策を非難しました。その直後、ハリー・ロケ大統領報道官は、政府が違法な殺害に関わった警察官を刑事告発したと発表しました。このことが「この社会において刑事免責は存在しない」ことの証左だとするのが政府の姿勢です。

 

CHRは麻薬戦争に関連した人権侵害の事案を1,129件取り扱っており、1,395名の被害者がそれらの事案に関わっています。そのうち、614件は警察の作戦で人権侵害が行われたもの、511件はいわゆる自警団員による殺害です。CHRはこれらのうち約9割を自発的に捜査しています。それ以外が、公式ルートを通じて出された被害届に基づく捜査です。De Guia氏は、人権委員会が取り扱う事案のうち95パーセントは殺人事件であるとしています。

 

「前例のない数」

CHRは、これまでの政権においても、ある程度の数の人権問題の申立を受けてきた一方、ドゥテルテ政権における殺害事件の数は「前例がない」と言います。De Guia氏は「当委員会はではこれまでも、ありとあらゆる超法規的殺害の裁判に出席するよう努力をしてきました。しかし、今では対処しがたいほどの数と規模に直面しています」と苦悩を示しています。

 

目撃者が表に出ることを避けるなど、「恐怖の兆候」が広まっていることも、CHRが麻薬戦争における殺害事件の捜査進行を妨げています。

 

HRWは、ドゥテルテ政権の麻薬対策を「でっち上げの戦争であり、その結果として、大多数の貧困層がさらにひどい状況に陥っている」と見ており、CHR同様、違法麻薬の脅威がもたらす影響を縮減させるという政府の目標は達成していないと考えています。

 

HRWのカルロス・コンデ調査員は「政府は麻薬の需要を減らすという目的を主張しているが、それで政府の反麻薬作戦の効果を測っても、完全には明らかにならない。もし麻薬戦争が本当に成功しているのであれば、今現在、街中から麻薬が一層されているはずです。しかし実際はノーです」と政府を批判します。

 

数多くの疑問

HRWは、政府の作戦を通じて12,000人以上が亡くっても麻薬問題が消えることはなく、むしろ、フィリピン人は多くの疑問に直面していると考えています。コンデ氏は「この死者数を見て麻薬戦争が成功していると評価できるでしょうか?ドゥテルテ政権が貧困こそ問題とみなさない限り、何の意味もありません」と話します。

 

死者数は減少を見せる一方、HRWは、政府は不審者の検挙などを通じた「反貧困」キャンペーンを続け、ドゥテルテ氏の権力乱用を監視するジャーナリスト、人権活動家、宗教界のリーダーを攻撃していることに懸念を示しています。HRWは「ドゥテルテ政権が3年目を迎え、死者数と同程度に、政府の説明義務も重要であるが、それは無いに等しい。この意味では事態は更に悪化している」と述べています。

 

もし麻薬戦争の効果を数字で推し量ることができるのであれば、自治省の監査委員会の数字を使うとよいでしょう。2017年の監査報告によれば、自治省は、違法麻薬撲滅の主要な計画”Masa Masid” の目標を達成していないことになります。

 

5億ペソの予算

“Mamamayang Ayaw Sa Anomalya, Mamamayang Ayaw Sa Iligal na Droga”, 「国民は麻薬が蔓延る異常な社会を許さない」の頭文字をとったMasa Masidは2017年に開始しました。この計画では、人々の麻薬と汚職に対する認識を高め、これらの問題解決において地域社会の参加を促すことを目的としており、2017年だけで5億ペソの予算が割り当てられました。

 

自治省は地方政府に対して麻薬対策において特定の作戦を講じるよう指示しました。その作戦としては、支援運動や教育活動を通じた麻薬需要の削減、情報収集と報告を通じた麻薬の需要と供給の削減、地域社会に根ざした更生プログラムなどが含まれます。

監査記録によると、当初予算の大部分にあたる76.05パーセント、3億8,023万2000ペソが2017年6月から12月にかけて、各地方政府に割り当てられ、各種訓練プログラムに使われました。しかしながら、当初計画された活動の実行の遅れもしくは不実行により、Masa Masidはその目的を達成できなかったとしています。使われなかった8,868万9,000ペソは急遽、他の機関へ割り当てられました。このことを、監査委員会は次のように結論づけています。

「前述の調査結果を通じて判明した、プログラム活動が実行されなかった点、及びプログラム予算が活用されなかった点が示唆することは、自治省はMasa Masidにおいて具体的な計画を組まず、その結果、プログラムの目的未達に至ったと言うべきである」

 

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