ドゥテルテ大統領「命が惜しければ刑務所に入れ」と麻薬犯罪者に警告

本日はフィリピンで展開されている麻薬撲滅作戦に関するニュースを共有します。

ドゥテルテ大統領は、一連の麻薬撲滅作戦に関連し、違法麻薬取引で財を成したセブ州民に対し「命が惜しければ、逮捕を受け入れて刑務所で過ごすという道も頭に入れるべきだ」と警告しました。
この発言は、フィリピン海軍創設120周年記念式典の演説でなされました。その中で大統領は、違法取引で財を成した人物の中には、そのことを誇示している者も多くいるとの見方を示し、さらにこのように付け加えました。

「仮にもし自分がセブに住んでいたら、刑務所に入る道を選ぶ。刑務所に入らざるを得なくなった理由を受け入れるべきだ。そして決してそこから出るべきではない。その方が身のためになるだろう」
しかしながら、有名な麻薬犯罪の容疑者のうち少なくとも1名は、刑務所の独房において警察により射殺されており、それは警察による抹殺行為であったと考えられています。
2016年にレイテ州の刑務所で発生した、アルブエラ市のロナルド・エスピノーザ市長が警察により殺害された事件では、警察は銃激戦による死亡だったと発表した一方、政府の調査官は殺人行為だったと結論づけました。
この事件で、当事者の警官は当初、殺人罪で告訴されましたが、その後、保釈後の職務復帰が可能となる過失致死罪へ軽減されました。
大統領は「麻薬の使用者や密売人を逮捕するのは難しい。なぜなら商品である違法麻薬が彼らの手元あるか、その手の届く範囲内になければ逮捕が許されないからだ」と述べました。

そして、麻薬取引で財を成した人物の中には、「正しいことをした市民」であるかのごとくその成果を披露する人物がいるという見方を示した上で、大統領は「そうやって自慢できるのは、犯罪の証拠が存在しないからという理由からだけなのだろうが、本来は犯罪の張本人である」と非難しました。
今回の演説では冒頭、テロリズムと南シナ海での領土紛争について触れられましたが、その後、大統領は麻薬撲滅作戦に矛先を変えました。そこで「麻薬が国を滅ぼしかねない」とする自らの考えを再強調しました。
大統領は「国民の命を守り、国の安全を守る」という任務の下、麻薬戦争には警察と軍隊の双方が関わると示し、警察官及び兵士が麻薬戦争の任務遂行にあたって、誰一人として刑務所に入ることは許されないと改めて約束しました。
一方で大統領は、麻薬犯罪者がこれまでにフィリピン国家警察の中にも存在したことを念頭に「これは念のため言っておくが、もし麻薬に手を出した者がわれわれの側にいるならば、その者が最初の刑務所送りになる」と、麻薬関連の法執行機関の職員に釘を刺しました。
元検察官で、元ダバオ市長でもある大統領は「すべての犯罪者、すべてのならず者警察官、そして国民にひどい苦しみを与えようとしている者に対して言うが、私が様々な不正を矯正するだけの時間はまだまだ十分ではない」と述べ、さらに「私の矯正策を好まないかもしれないが、もう後戻りはできないと警告しておきたい。そして、私は麻薬戦争の最前線に立つ」と覚悟をあらわにしました。

国家警察の報告では、麻薬撲滅作戦において、警察との銃撃戦で死亡したとみられる麻薬犯罪の被疑者の数は、4月30日現在、4,251人にのぼります。
しかし、死者の多くは貧困地域出身でした。人権監視団体では、死者数はさらに多いとの見方を示していますが、政府はこれを否定しています。
大統領は超法規的処刑を許容しているとの見方を否定しています。

その一方、麻薬戦争における殺害行為と人権侵害行為に対して警鐘を鳴らすバラック・オバマ前アメリカ大統領や、西側諸国の政府、国連の人権監視当局者など、大統領の方針に批判的な人物を厳しく非難をしてきました。
大統領は、国連人権高等弁務官事務所のザイド・フセイン高等弁務官が3月に行った非難声明に返答を行う考えがあったが、国家安全保障補佐官の進言を受けて、返答を差し控えたと明らかにしました。

補佐官は、フセイン氏がヨルダンの王族出身であり、かつヨルダンがフィリピンに攻擊用ヘリコプターを2機提供していることを理由に上げ、大統領の行為に歯止めを掛けた格好です。
フセイン氏はかつて、大統領が人権監視当局の高官に投げかけた「受け入れがたい言動」に対して、「ドゥテルテ氏は精神鑑定のようなものを受けていただく必要があるのではないか」と述べたことがあります。